図1.鉄の高圧下超伝導相図通常は強磁性と超伝導性は競合し合い、わずかな磁気不純物でも超伝導状態を壊すので、超伝導性と強磁性は相入れないものであると考えられてきた。
しかし、非磁性の金属であれば超伝導体になりうる可能性がある、というのがこの研究の出発点である。典型的な強磁性体である鉄は、およそ10 GPa以上の圧力域で構造相転移を伴って非磁性構造に変化することが知られており、この状態で超伝導を起こしうると理論予測もなされていた。
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今回、出発試料の純度および印加圧力の静水圧性を向上させた結果、鉄の非磁性相に相当する15〜30 GPaの圧力域において、最高2 Kの転移温度で超伝導性が確認された(図1)。
この転移は、抵抗率及びマイスナー効果の観測により確認した。
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この鉄の超伝導は始めに述べたような単純な非磁性金属の超伝導でいいのだろうかと、高圧低温下の鉄の磁性については議論を残しているようだ。 別の磁気相が低温に存在する、または僅かに磁性を残しており、UGe2などと同様に磁性との共存として理解できるとの意見もある。
講演ではダイヤモンドアンビルセルによる高圧発生等の技術的な解説も含めて述べる予定である。
参考文献